胎界主2話「人面疽」対話篇

《ネタばれ注意》

登場人物

A、胎界主を読んでいる。回答役

B、胎界主を読んでいる。質問役

 

B「そういえば、なんで凡蔵さんちはあんな郊外にあるんだろう」

A「死体を扱う職業は賤業とされてきたからじゃないでしょうか。『死に商業的にかかわる事業の「正当化」の困難さ』*1によりますと、現代において葬祭業に対しての蔑視が和らいだのは死体を扱うのではなく、儀式を扱う職業であるとキャンペーンをしたことが大きいらしいですからね。鮒界市では土葬が主流であるようですし、日本でいうと戦後ぐらいの意識であったと推定するのが自然だと思います。葬祭業はヤクザ同様マージナルにある職業ですからね。余談ですけど、“このような社会からのまなざしを自覚していた葬祭業者は、自らが社会的承認を得るための工夫を行った。”(249ページより)暗いイメージを払拭するために会社名を○○葬具であったところ○○商事に変えることで明るいイメージを定着させようとしたあたり、名付ける力という感じで胎界主っぽくていいですよね」

B「なるほどね。じゃあ次の質問なんだけど、助けを求めてきた人に稀男はなんでわざわざ看板に盗人へ地の果てまで追いかける→地の果てまで行ってくるって書いて居留守したり貯金全部寄こせとか言って嫌がらせするの?」

A「それは、まず風評を広めすぎないためと、本当に助けを求めているかをふるい分けるためでしょう。稀男の人助けは当人の意識はともかく、自身の存続のための承認を得るためというのがありますから、実は稀男に助けを求めていなかったりすると意味がないですからね。あと3ページのは不意打ちのためというのがありますね」

B「それにしても、3ページの “信じるってなぁ難しいもんだなぁセンセイ「信じさせる」ってなぁもっと骨が折れるがよォ”のあたりって、今日子が稀男に信じさせることと人面疽が承認を得ること(信じさせること)の困難への共感という読みでいいと思う?」

A「あーwikiの“久松の言葉は稀男に騙された日光先生と、(おそらくは)騙されて連れてこられた自分の両方について言及している。”よりは、少しましかもですね」

B「次なんだけど、8ページで稀男が突然放尿するのって用済みだから去れやということでいいの?」

A「なんだお前まだいたのか(頻出)は、そうだと思います。それにしても、上手く言えないのですが、最後、本物の久松なら食べ物を粗末にしないというのが正しかったというのがオチですけど、こうして本物とまがい物を見分けることが、これからの話でも繰り返されるのですよね」