「パーティーを追放されたおっさん、辺境でスローライフ送ってたら女の子にされたあげく出産し、ママになってしまう」感想

なので実行です。

あらすじ

おっさん冒険者サムソンは、年齢から来る衰えを理由にパーティーを追放されてしまう。
しかたなく辺境の村を訪れ、第二の人生は農業を営むと決意。
やがてハーフエルフの美少女エリナとも結ばれ、スローライフを満喫していたサムソンだったが、ある日魔王軍の攻撃で二人の体が入れ替わってしまう。どうにか戦いには勝利したものの、一ヶ月後、エリナの体が妊娠していたと発覚。サムソンはおっさんでありながら、出産を経験するのであった。
美少女ママとして無自覚に周囲を戸惑わせるサムソンの、倒錯的な日々が始まる。

引用したくなる、≪圧≫の文がいっぱいなので紹介します。

第8話「ママが世界で一番好き」より 

 「で、では、あれですか。友達がいる前でお母様が忘れ物を届けに来て、『おいおい随分可愛い彼女だな。それとも姉ちゃんか?』とからかわれて、『あれは母さんだよ』と嫌そうに答えるのも、経験済みなのですか?」
「そのイベントなら、既に三回起きたな」
「かっはっ!? ……そんな……異常な若作りの童顔ママじゃないと体験できない、あれを? 嫌がって見せながらも内心優越感いっぱいな、全世界のママラブ勢が憧れる、あのシチュエーションを、三度も……!?」
「当然だろう? これを体験するためにわざと忘れ物してたからね」

 驚いている側の人(シャロンさん)もまたママキチです。

 「君は僕と同じだ、シャロン。そうだね?」

 白い歯を見せ、王子様の如きスマイルを浮かべるレオン。
 そのイケメン勇者としか言いようのない顔で、シャロンの両肩を掴む。
 目と鼻の先にまで迫って、まるで口説き落とすかのような構図だ。
 事情を知らない見物人の女の子達が、きゃーきゃーと囃し立てる。

「……貴方と、同じ……」
「そう。君も僕も、重度のお母さんっ子だ。それも病気の域に達してる、ね。同族にはわかる。特有の臭いがあるんだ」
「……わたくしは、そんな」
「だったら何故ここまで僕と話が噛み合うんだい!? ママが大好きなんだろ!?」 
「う、うぐっ!」
「二十四時間若くて綺麗なママに優しくされたいって考えてなきゃ、僕とは話が合わないんだよ! 僕の友人は全員、頭のおかしいお母さんっ子だった! 真人間なら僕と数フレーズ会話しただけで、異常性に気付いて逃げて行くんだ!」

 わたくしは。わたくしは。言いながら、シャロンは額に大粒の汗を浮かべている。
 それとレオンのガワだけ見て黄色い声を上げていた女の子達が、「やべえよあいつ」と呟いて散って行った。
 お前こんなんだから彼女できないんじゃないの?

 モブたちがいい味を出しています。このようなモブ芸もまたこの小説の読みどころです。

本性(ママキチ)が露わになったシャロンさんの発言は息子が常識人に思えるほどのパワがあります。

第15話「ママにしか言えない」より

 「エリナママは、人生のピークっていつだと思いますか」
「ええ? ……うーん。人によると思うけど、普通は二十代かな? 年齢に関係なく、新婚直後や子供が産まれたばかりだったら、そこがピークかもしれないけど」
「違いますわ」

 シャロンは目をつむると、穏やかな声で語り始めた。
 まるで宗教指導者が、信徒に教えを説くかのようである。

「母親のお腹の中にいる時期が、人生のピークなのでしてよ。あったか胎盤おふとんに包まれて、羊水のみを飲食し、へその緒でママを拘束……コホン、繋がっていられる。これこそが子供にとって、最も幸福な時期なんです。産まれたら敗け。敗けなんです」

他にも

 「よいですか? わたくしは見た目こそ十三歳かもしれませんけど、根っこの部分は生後二秒の赤ん坊なんです。心の中ではへその緒がぶら下がったままなんです。そこをしっかり意識して発言して頂かないと」 

 やばい最高。私(読者)はこういう文を読みますと忠誠心のようなものが湧きます。

とまあ、なんなら全文引用したくなるのでキリがありません。なので小説を読んでいただけたら幸甚のきわみであります。